トラウマ症状として現れる~調節障害~

仕方がなかったことには出来ないトラウマ体験

今日は、トラウマ症状として現れる様々な調節障害ついてお話ししたいと思います。

PTSDの主な症状『再体験』『脅威感』『回避』については前のブログでそれぞれ説明していますので、

良かったらそちらをご覧ください。

トラウマティックな出来事により心に大きな傷を負うと、不安や自責、恐怖や怒りなどのネガティブな感情がその後の人生に長く続きやすく、喜びや幸せ、心地よさなどのポジティブな感情を感じにくくなります。

それらは、いずれもトラウマ反応による気分の否定的変化と呼ばれるものです。

常に落ち込みやすく疲れが取れず、自分ではどうすることもできずにこころが立ち行かなくなると、『解離』と言って無意識化で感情と自分を切り離し、物事への対応が自分自身の事であるにもかかわらず他人事のような状態となることがあります。解離が起き始めると日常生活の中で記憶が抜け落ちたり、断片的な記憶になったりと物忘れがひどくなったりして自分自身や周囲が異変に気づくことがあります。

また、すべての感情を何も感じない状態、いわゆる『感情麻痺』を引き起こすこともあります。

これを感情の調節障害といい、人間関係にも深く影響をおよぼします。

逃げることも闘うことも出来なかったトラウマ体験は、様々な出来事や人に対して極端に否定的に捉えてしまうという

認知調節の障害も引き起こすことがよく知られています。

例えば、異性からの性暴力がトラウマ体験となっている場合、『誰を』ではなく『異性』という存在自体を信頼することが難しくなり、加害とは全く関係ない異性に対しても恐怖を感じるようになり、さらには、家から出ることさえも怖くなり外出することが難しくなるといったことがあります。

私達は毎日たくさんの小さな情報から様々なことを判断して過ごしています。しかし、トラウマティックな体験により心に深い傷を負うと今まで意識することなく行えていたそれらの判断が難しくなってしまうのです。

何故ならば、二度と同じような恐ろしい体験をしないようにと詳細な部分まで認識して判断するよりも先に、脳をはじめとする神経系が些細な刺激にもアラームをならすようになってしまうからです。

何事も用心するに越したことはないし、誤作動ならば分かった時点で修正され、神経系もブラッシュアップされるだろうと思う方もいらっしゃるかも知れません。

しかし、残念ながらトラウマ記憶は他の記憶と違って時間の経過とともに色あせることがないため、危険察知アラームはやむどころかいたるところで誤作動・過剰反応をするようになっていきます。

その結果、世界は危険に満ちている、誰も信用してはいけない、こんな惨めな自分だから被害にあったんだ…などというようにどんどん事実とは離れ、現実のありのままを見ることが難しくなってしまうのです。

最後に、対人関係の障害について。

今までお伝えしたように感情や認知、行動などの調整がうまくいかなくなると、どうしても安定した人間関係を築くことが難しくなっていきます。

トラウマセラピーに限らず、人間関係に関するお悩みはいつの時代も尽きることがありません。それだけ、安定した人間関係を結び維持することは誰にとっても簡単なことではないのです。

ですから、人とのかかわりの中で生じたトラウマの場合は、それをさらに難しいものにしてしまうのは当然と言えば当然です。

トラウマ反応として、

些細なことに対してもとても敏感となるため、

常に周囲を警戒し、この人は自分にとって安全か危険か。

信用に足るか足らないか…

というトラウマ眼鏡越しに相手を見るので、当然、程よい距離感を築くのは難しくなります。

また、一度信用できると思うと、その人への期待や受容してほしい気持ちが一気に1から100へと高まりやすく、

何かの拍子に自分の期待から外れたことがあると今度は一気に100から0へと転じたりします。

まるでジェットコースターのようです。

さらに、人とのかかわりでもたらされれるトラウマには、

【支配-被支配】のパワーバランスの関係性の元で生じるものがほとんどです。

そしてその関係性はそのままの形で再現されることもありますし、逆に、加害者像を自分に取り込み、今度は自分が加害者として同じ関係性を再現したりすることがあります。

トラウマ体験の予後として現れる症状は、長期間にわたるうえ、その影響は生きていく上で広範囲におよびます。

こころだけにとどまらず身体の痛みとして首筋の張りや腰痛、さらに便秘や下痢などのの身体症状として現れることも

あります。

今日は、トラウマ症状として現れる3つの調節障害についてお伝えいたしました。

いづれの調節障害も相互に影響を及ぼしあい、今を生きづらくするものです。

すぐに症状が良くなる魔法のようなセラピーは残念ながらトラウマケアにはありません。

しかし、症状である以上、症状にあったトラウマケアを丁寧に続ければ回復することは可能です。

諦めないで少しづつ少しづつ、自分の人生を取り戻していきませんか?

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また次回のブログでお会いしましょう。

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トラウマがあると出来事そのものが苦しい感情をもたらすため、

その苦しさからあらゆる感情が感じられなくなってしまう感情麻痺を引き起こしたり、

二度と同じような被害にあわぬように危険を避けるためにも