PTSDの症状①
【再体験】~コントロールできない記憶が今を生きづらくしている~
こんにちは。
今日は、トラウマ体験後に自然回復がされず、一定の時間が経過した後も心身の不調や生きづらさとして現在の生活に影響を及ぼしている代表的なトラウマ症状の1つである再体験のついてお話したいと思います。
再体験は、PTSDの診断基準の一つの症状であり、トラウマを経験したときの感覚がすべてそのままよみがえる現象の事をさし、記憶の調節障害の一つと言われています。
ちょっと難しいですね。
トラウマではありませんが、似た状態の例をあげるとしたら…
皆さんが街を歩いているとき、どこからともなく懐かしい音楽が聞こえてきたとします。その音楽は学生時代に好きだった人と一緒によく聞いた曲です。その音楽をきっかけにふっと『あの時・あの頃』が鮮明に思い出されて、その時に感じていた胸の感覚や感情がつい最近の出来事のように思い出される…といった体験はありませんか?
私たちは記憶を活用しながら日々生活を営んでいます。皆さんも日々の体験を記憶したり、思い出したりすることは、自分自身である程度はコントロールが出来ていると思います。そして、誰にとっても記憶というものは時間の経過とともに薄らぎ思い出として整理され、大切ではない記憶は忘れられていきます。
しかし、一方でトラウマ体験によるトラウマ記憶はそうはいきません。
トラウマ記憶
トラウマ体験によるトラウマ記憶は、時間と共に薄らいでいく通常の記憶とは保存の方法が全く異なります。トラウマとなる体験は、SE(ソマティックエクスぺリエンシング)では、too much too fast too soon(多すぎる・速すぎる・突然すぎる)と表現されています。つまり、圧倒されてしまう出来事に、逃げることも闘うことも出来ず、その時のすべての記憶(情景・感覚・感情etc…)ごと瞬間冷凍保存された状態で残ると言われています。瞬間冷凍された記憶は、いつまでもフレッシュで時折なにかのはずみで蓋があくと意識とは関係なく解凍が一気に始まり、再体験状態に陥ります。
つまり、自分ではどうすることもできないコントロール不可能な記憶に振り回されている状態と言えます。
【再体験の症状】
・侵入症状
⇒侵入症状とは、自分の意思とは関係なく過去のトラウマ体験が急に思い出される症状の事をいいます。
『思い出したくないのに頭から離れない』『考えたくないのに、頭に入り込んでくる』といった感じ。
・フラッシュバック
⇒侵入症状が激しい形で現れたもの。突然、今まさに現実として起きているかのように過去のトラウマ体験を体感するもの。現実感は失われ、当時見えていたものや聞こえていたものがリアルに見えたり聞こえているかのように感じます。本人を苦しめるとてもつらい症状と言えます。
また、周囲の人からは、前後の脈絡なく突然豹変したかのように見えるため、『キレやすい人』『キレやすい子』などと思われてしまい、人間関係を悪化させてしまう原因にもなりやすいでしょう。
・悪夢を見る
・物忘れ
⇒トラウマ記憶として過剰な記憶を抱えているため、日常における記憶が抜け落ちてしまうことが起きやすい。
・解離性健忘
⇒トラウマとなった出来事について重要な側面(本人にとって負荷が大きかった側面)を思い出せなくなる症状のことをいいます。
●再体験の症状は、自分自身の意思でコントロールが出来ないからこそ日常生活の質を低下させ、周囲からの孤立を招きやすく、
より状態を悪化させやすいものと言えます。
【周囲のかたへのお願い】
・状況に見合わないほどの激しすぎる怒り/突然の怒り
・急に表情が苦しそうになったり無表情になる。急に黙り込む
・声かけに反応しない。体に触れようとすると過度にビクッと驚いたり、叫んだりする。
もしかしら、今目の前で起きている症状はトラウマ反応がかもしれません。
そのような時は、穏やかな声で『○○さん、大丈夫?』と声をかけてあげてください。
また、上記の声かけにプラスして『ここは、○○ですよ。(場所)』や『私は、○○です(自分の名前)』を伝えるのも良いでしょう。
逆に、控えた方が良い行動としては、大きな声で呼びかけながら、身体に触れる。激しい怒りに真っ向から立ち向かうといった対応は控えましょう。
トラウマ症状は時間薬や意志の問題で解決できることではないということをご理解いただけたのではないでしょうか?
今日お話しした症状に思い当たる方は、一人で苦しむのではなく是非ご相談を。
また、ご本人のトラウマケアと同時に周囲の理解【トラウマインフォームドケア】の視点がとても重要になってきます。
トラウマインフォームドケアについては、とても大切なことなので、また改めてブログでお伝えしていきたいと思います。
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次回は、PTSDの症状②として『脅威感』過覚醒についてお伝えしたいと思います。
また次回のブログでお会いしましょう。
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